プロメテウスの罠:内部告発者

朝日新聞は2014年3月17日から4月1日まで、29回にわたって「プロメテウスの罠:内部告発者」と題するシリーズを発表しました。シリーズの第14回目はマーク1型と呼ばれる福島第一原発で使われている原子炉格納容器の問題点についての内部告発者についてです。下記は、その新聞記事の転記です。

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内部告発者:14 マーク1型の欠点

2014年3月17日

2011年3月、東京電力福島第一原発の事故は、米国でも大きく報道された。元GE社員のケイ・スガオカ(62)は内部告発者として新聞に次々と取り上げられた。

もう一人、内部告発の大先輩といえる人物が新聞やテレビに登場した。デール・ブライデンボー(82)。それをきっかけに2人は初めて会い、福島を語り合う。

GEのエリート技術者だったブライデンボーは1976年2月、原子力発電の危険性を世の中に訴える活動を始める。勤続20年余の44歳で、約20人の部下がいた。その職をなげうっての告発だった。

当時、マーク1型と呼ばれる原子炉格納容器の改良を担当していた。福島第一原発1~5号機にも使われているタイプの格納容器だ。しかしそれには問題があった。

「問題はとても重大で、その結果は受け入れがたいものでした」

76年2月18日、米議会でブライデンボーはそう証言している。

問題とは何か。GEの沸騰水型の原子炉は、炉心の圧力容器から水蒸気が放出されてきた場合、格納容器の下部のプールの水中にそれを導き、水で冷やして液体に凝縮させ、圧力を下げる仕組みになっている。

ブライデンボーによれば、その際、プール内部に局所的に高い水圧と強い衝撃が加わる。それがダメージをプールに与える恐れがあった。特にマーク1型の格納容器は構造が複雑で、心配が大きかった。

76年1月、速やかな是正策が約束されない限りマーク1型の原発の運転に賛成できないと、ユーザーの電力会社に言うべきだと上申した。しかし「そんなことをしたらGEの原子力ビジネスは終了だ」といわれ、受け入れられなかった。

76年2月2日に辞表を出す。その翌3日、新聞各紙に大きく載った。

GEのエリート原子力技術者が「原子力のリスクはあまりに大きい」と明言したのだ。それはビッグニュースだった。

のちに映画「チャイナ・シンドローム」を監修した。ジェーン・フォンダ主演で79年3月に公開された。

「あの映画が封切られた当初、『起き得ない話だ』とか『非現実的だ』とか、原子力業界からずいぶん批判されました。しかし、12日後、スリーマイル島原発の事故が起きた。その結果は、映画の中の事故よりもはるかに悪かった」

以来、アメリカは新規の原発をつくらなくなる。(奥山俊宏)