福島原発事故、環境汚染主原因の考察            伏流汚染水=5年、今なお続く根源汚染水

特別寄稿                        2015/12/16 山辺真一氏
安全神話を造り原発信仰を支えた「原発安全の五重の壁」がことごとく破られ、福島事故環境汚染を生みました。
「閉じ込める役割り」を自らの安全弁圧力以下で破綻した原子炉格納容器の壁、メーカー瑕疵の疑念のある2号機圧力抑制室の大破口=貫通穴より、桁違いの放射性物質が広範囲に放出されました。事故当時の環境拡散は暗澹たるものですが、加えて現在も修復されず、日々「根源汚染水」として海洋に向かい流出しています。放射性物質の逸失を「まず止める」火急の課題に猶予はありません。

2011破綻直後より経済産業省への東電の定期報告に公表されない「根源汚染水」を示唆する記載があります。

福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について (第230報)

デブリ冷却後の汚染水が(事故破綻した圧力抑制室の大破口から)建屋地下を経由するフローが図示されています。(注記1)
一方、目の敵にされる地下水は悠久の昔より山側から海側へと流れています。隙間だらけの原子炉建屋に侵入もすれば通過流出することで、強汚染水と清水とのクロスオーバー、「たまり水」ではない際限のない汚染流出が続いています。汲み上げられない伏流水、デブリ冷却水が未処理まま混濁した「根源汚染水」の環境拡散、海洋汚染の継続的症状は被災者、国民に説明されることなく、経産省-東電の間で5年間当然のこととして報告されています。

原子炉漏れ「根源汚染水」を放置したままの「地下水排除対策」では現状は好転しません。
遮水壁と称して建屋を遠巻きに囲えばその内側の地下汚染水濃度を上げ、陸海を問わず周辺線量を上げていく「不安」があります。さらに高濃度のまま水位が上がり、いずれ太平洋に溢れ出るしかありません。対応する汚染水処理能力に飛躍的向上が見込めるのでしょうか。現況と対策影響を解析し、トータル収支の見通し説明が必要です。
当該管理区域が現状のアクセスさえ困難になる、終には廃炉作業をも拒んでしまう破局を迎える「恐れ」があります。

「閉じ込める役割り」の破綻・現状を見極め、原因を明らかにし、修復・収束を図る具体策を求める。訴える。
「原発事故による汚染水に関わるデータは公開される」原則に基づき(東電が日々把握している)過去から現状の「逸失している根源汚染水」を数値的に捉える情報開示を求める。(注記2)
破綻した原子炉2号機損傷=ハードウエアの疑念について見解を質す。(福島事故環境汚染の考察(2号機損傷=ハードウエアの疑念)参照
汚染冷却水が建屋地下を経由するフローで形成する現状から、まず可能な限り原子炉内で回収を図り、建屋地下と外部の水密の回復、さらに2号機大破口の修復を復興スケジュールとして求める。(注記3)

「閉じ込める役割り」の原子炉格納容器、壊れた壁を回復する「技術と責任」は製造物責任(社)に在ります。原発メーカー自身が5年の無策を恥じ、現実直視・説明責任を果たし、「まず止める」早期修復しか道はありません。
原因解明・破損修復を放置し、環境汚染・被災の継続に説明責任さえ全うされない「不安」と末路の「恐怖」を禁じ得ません。
以下(注記1、2、3)
(注記1)…たまり水の貯蔵及び処理の状況について(第230報)…添付資料-1図の示すもの。
原子炉内発熱体デブリを冷却するため、圧力容器に向けて、注水タンクより1,2,3号各機100m3/日以上の給水が記述されています。圧力容器から格納容器(D/W)の底に伝い、冷却後の汚染水は圧力抑制室(S/C)に落ち、S/Cから建屋トーラス室の滞留水に流出、タービン建屋に回り込み、そこからポンプアップ還流し除染処理されている。
(原子炉内デブリの冷却、その直後の最も高レベル汚染水を水密保証の無い炉外建屋域を通過させている)
東電汚染水対策報では(…地下水のうち、1日あたり約300トンが原子炉建屋に流れ込み…)建屋(地下)は号機(ユニット)・用途を限らず連通し、外部地下水と流通している記載がある。
→日々の冷却水が建屋への流入地下水により希釈され、ポンプアップ還流し処理されている以外の汚染水は流出地下水に載って環境拡散しています。
ちなみに、本報告内で建屋内滞留水の水位は(上流地下水への逆流を防ぐ)OP.3mを維持する計画が示されています。海面より高い水位設定は、応分の水勾配により地下水流とともに海へと注ぎ込まれる認識の上、と考えられます。
→本図に記載されていないフローがあります。
(ベントが成功し原子炉破損が限られている)1、3号機でわざわざ混濁の恐れのある建屋(地下)に落とすことなく、格納容器から直接処理装置に戻して還流しているべきです。その直接還流水はデブリ冷却の最も高レベル汚染濃度を示しています。号機(ユニット)別に格納容器-直接ルート、建屋経由ルートを峻別すると、その責任の比重が見えています。

(注記2)東電が日々把握している逸失している根源汚染水を数値的に捉えた情報開示を求める。
1、2、3号機(ユニット)別にトータルフロー、その構成を示し、格納容器-直接ルート、建屋経由ルートを峻別する。
A.(原子炉冷却水の1日供給量-直接還流量)×直接還流水汚染濃度
B.(原子炉外建屋経由の1日回収汚染水)×回収水汚染濃度
単純にA-B=C値が今もって環境に放出されている1日当たりの放射能汚染物質の総量となります。
・東電は日々、A,B,C値を把握して冷却作業に向かい合っているはずです。
・事故により飽和状態と思われる管理区域から「C値の放射性物質」が環境に放出されていることは明らかです。日々のC値がいずれ海洋に向かうことを止めているものはありません。

(注記3)建屋と外部の流通を絶つ水密の回復を求め、さらに圧力抑制室破口修復を復興スケジュールとして求める。
例1)号機(ユニット)別に、格納容器(D/W)、圧力抑制室(S/C)及びトーラス室にもポンプアップ回収ルートを設け、可能な限り格納容器内で循環を閉じるように改善を図る。
・まずタービン建屋を切り離し、格納容器側の還流を最大化し、結果、混濁の機会を最小化する。
・上記(注記2)C値を管理し、トーラス室と外部地下水の流出入を最小にする適正化を図る。
例2)外部地下水の流出入を最小化した上で、凍土壁の技術を持ってトーラス室の凍結封鎖を狙う。
・凍土壁の狙いと同じく流通体そのものを固めて行くことで潜在水路を残さない。
・トーラス室内で圧力抑制室損傷穴を超えて凍結することにより根源汚染水の元を絶つ。
・デブリ冷却水の原子炉内に留まる循環、閉ループを完成させる。
・環境から隔絶された一次冷却水の汚染処理は大幅に簡略化できる。
閉じ込める責任を負う原発メーカーの技術を動員しあらゆる方策をもって、「廃炉」を考える以前に「まず止める」。
「根源汚染水」の流出総量を止めた上での「たまり水」処理によって、収束の展望を構築することでなければ、アンダーコントロールとは言えません。
以上