サンフランシスコ日本総領事館への申し入れ書  10月11日 2015年 SAM KANNO 

(会報誌No2に掲載できなかった投稿分です)
  日本国総理大臣安倍晋三殿 

 9月19日の日本の国会に於ける「安保関連諸法案の承認」は日本が「平和国家」をかなぐり捨て、公然と「戦争が出来る国となった」ことの宣言であると同時に、依然として続く「フクシマ核災害における被曝被災者棄民」の状況の隠蔽にもつながるものとして米国の地より抗議します。

 安全保障関連法案は、中国、ロシア、朝鮮あるいはイスラム諸国を仮想敵国とし、核保有強大国の米国と共に(核兵器を含む)軍事力の強化をもってこれに備えるという法律だと理解しています。しかしお考え下さい。私たちは移民国家の米国に住んでおります。私たちの周りには、これらの国々にルーツを持つ方々もたくさん住まわれています。コミュニテイとしても、チャイニーズ、コリアン、イスラム圏、そしてジャパニーズと様々な人種・ナショナリティのコミュニテイが隣り合わせて存在しています。しかしこれら私たちの間で「武力」を持ち合って争うという事態は聞いたことがありません。たとえ文化的な違いや、習慣の違い、あるいは政治、経済的な理由でお互いに行き違いがあったとしても話し合いや交流を通じて充分に問題を解決してきました。なぜ国という単位になると、お互いに軍事力を持って戦うことまで想定し、準備しなくてはならないのでしょうか。おそらく私たちのような一般庶民、民衆の間にではなく、国を牛耳っている人たちの間で譲ることの出来ないものがあるのでしょう。
 第二次世界大戦以前には、軍事・経済力を背景にした特定の不平等的ルールや社会システムの強要、独占的な商圏の確立、あるいは国境を越えての領土侵略や資源の収奪、非力な相手国を遅れた国家、民衆とみなしての経済的搾取・収奪を、“国家を前面に押し立てて実現した帝国主義戦争”が歴史的に確認されています。しかし、現在これらの戦争は「国連憲章」や「日本国憲法」前文で否定されています。
 では今日、日本国家は、なにを目的としての軍事力の増強や軍事同盟の強化なのでしょうか? ここ25年間に亘って続く経済的、政治的な行き詰まりの稚拙な打開策以外のなにものでもありません。軍需産業や、その中核である原子力産業を一層育てて海外への輸出を図り、国の経済を「立て直す」ことと、国策として進めてきた原発政策の破綻を日々警告するフクシマ核災害の悲惨の隠蔽のためでしかないと思っています。

 福島のみならず、東北・関東一帯に広がる核災害の悲惨は、実際日本国家の存亡に係わる事態にまでなっています。1955年以来、日本への核の技術と原料の導入を意図した原子力産業の育成は、当初から日米両国で行なわれていた「原発事故被害賠償シュミレーション」で明らかにされていた“国家予算の数倍から数十倍という甚大なリスク”に敢えて目をつむって為されたのでしたが、ついに予想以上に悲惨な形で現実化してしまいました。
 137人の発症にまで増えた小児甲状腺がんの激増に象徴される被曝住民の健康被害は、白血病や心臓・循環器系などの重篤な疾患の激増を意味するものでもあります。まさに放射線被曝による疾患は枝野官房長官(当時)の「すぐに影響のあるレベルではない」発言の意味する“遅発性”に特徴があるのです。
 それでも国は、現在20mSv/yという高濃度汚染地域へ住民の帰村を促し、支給していた「避難賠償金」の打ち切りという政策を執ろうとしています。これは「ICRP(国際放射線防護委員会)」試算においても1万人に百人の死者を生み出すほどの放射線汚染地帯への“帰還の強要”です。
 また、現在原子炉からメルトスルーした3基300余トンもの核燃料廃棄物デブリの行方は誰にもわからないまま、東電は毎日400トンもの水を注入して「地中での再臨界を防ぐ」という処置を取っているのですが、福島原発の地下に流れ込む豊富な地下水が放射性デブリと接触し、高濃度汚染水となって海洋へ大量に流出している事態となっています。「2020年東京オリンピック」招致時の安倍総理による「放射能汚染水はアンダーコントロール」という発言の大嘘は世界でも周知の事となっているわけですが、現在福島県警によって、東電新旧経営陣32名に「汚染水の流出を防ぐ注意義務を怠ったとして、公害犯罪処罰法違反」容疑での福島地検への書類送検が為されています。
 しかも国は、原発構内においては「放射性廃棄物」として隔離して廃棄しなくてはならない100Bq/Kgまでを汚染許容基準とする汚染地域産の農・水産・畜産物の全国流通を容認しています。これら汚染生産物の全ては国が買い上げて隔離・廃棄し、放射能汚染食物の摂取による全ての日本国住民の内部被曝を避けさせるべきです。

 以上に踏まえて、緊急に以下の点を要望させていただきます。 
要望の①、1ミリSv/y以上の汚染地域の居住者に、放射線被曝の危険性の告知・教育を行なうと共に、「避難の権利」を社会的・経済的に保証する事。避難希望者の避難先を海外も含めて充分確保すること。
要望の②、当事者能力を失った東電に依る終息作業をやめさせ、これまで原発政策に反対してきた科学者らをトップに据えた終息チームをあらたに作り出すこと。その為にも、全ての情報公開が必須です。
要望の③、原発再稼動、海外輸出政策の即時停止と共に軍拡・軍需産業育成政策の停止。
 2015年10月11日 ロサンゼルス住人 SAM KANNO 

 附、「日印原子力協定締結合意の共同声明」について (12月23日)
 12月12日にモンディ首相(インド)と安倍首相の首脳会談に於いて合意されたとして発表された「日印原子力協定合意の共同声明」は、「Atoms for Peace」として62年間に亘って進められてきた“核発電の拡散が、同盟国間に於ける核兵器の拡散”に他ならないことを世界に示しました。
 米国はNPT(核拡散防止条約)未加入のインドとの間で、2007年7月に仮想敵国に中国を想定した「原子力協力協定」を結び、中国が対抗的にパキスタンへの核技術とその原料の供給を伴う核発電所の建設を支援する事態を生み出しました。印・パ両国とも1998年5月には大気圏核実験を相互対抗的に強行している核兵器保有国なのです。
 米国による“核軍縮を標榜するNPT体制の無力化”の尻馬に乗って、「平和利用」の建前をかなぐり捨てた安倍政権による「日印原子力協定」の締結を許してはなりません。